連載インタビュー 第2回 小林光恵さん
-「私と看護」 -  


皆様ご存じの「おたんこナース」、ドラマの「ナースマン」。それらの作品に原案者として関わられた小林光恵さん。看護師としてのキャリアは東京警察病院でスタートし、日本赤十字センター等で勤務。その後編集の道に入り、今は執筆活動を中心として、「看取る」ことをテーマにターミナルケアやエンゼルケアについての講演会を全国で行っていらっしゃいます。また、近日発売の著書は、看護界全体の「常識」と思われていることを、独自の視点で見つめた内容です。その一方でユキ タカセというデザイナーズブランドの服を愛用し、茨城県行方市の大使としての広報活動も続けられています。

今回のインタビューは、小林光恵さんの「死」という看護の現場でのご経験、「エンゼルケア、エンゼルメイク」、「看取る」というテーマを中心に、おたんこナース、ナースマンなどの裏話等、赤裸々に語っていただきました。

▼目次-------------------------------------------------------------------------------

看護師について

Q.小林光恵さんが職業として看護師を選ばれた理由は?

最初から看護師になりたい!と思い立った訳ではありませんでした。

私は、当初、町の保健師さんが良いかなと考えていました。保健師になるにはどうしたら良いか調べていると、看護学校に通い、看護師免許を取った後に保健師になるのが主流であることを知りました。ですので、保健師になる過程として、看護師という職業があり、やってみようかなという気持ちでした。そう考えたのは高3の1月ごろで時期的に受験の願書が間に合う学校が多くは無く、家庭の事情からも浪人はできないし、ともかく東京に出たいという気持ちもありました。

そんな状況下で、飯田橋にあった当時の東京警察病院看護専門学校に入学し、卒業後も東京警察病院に看護師として勤め始めました。

Q.小林光恵さんが看護師としてのご経験で「面白かった、辛かった」事などエピソードを1つご紹介いただけますか?

東京警察病院で看護師として勤めたのは2年間でした。内科、泌尿器科、眼科の混合病棟で勤務していました。仕事にプレッシャーを感じ、それが元でどうかしていた私は「辞める」と思い立ったら、誰からの忠告にも聞く耳を持たなくなり、結局は辞めてしまいました。また、辞めた時に、看護師免許証を破り捨てたことを覚えています笑。その後、すぐに再交付してもらったのですけどね笑。

次に茨城県の日本赤十字センターで献血の仕事に2年間従事しました。その後、出版の仕事がしてみたいと思い、日本エディタースクールに行き、編集の世界に入りました。看護師としての経験は、20歳前半の私にとって、とても濃厚で印象的なことばかり体験した期間でした。

私の実家は茨城県の行方市(旧:玉造町)なのですが、のんびり育ったせいでしょうか。看護師としての様々な経験は、当時の私には衝撃的体験の連続でした。

医療の現場は、人生の最たる現実として「看取り」がある場所です。私の看護師としての経験で一番大きな学びは、人はドラマのようではなく、「日常の中で死ぬ」と感じたことでした。看護師という職業は「死」と頻繁に向かい合う場合があります。人の死は簡単に割り切れるはずがなく、「死」という出来事が蓄積されていきます。

その当時の先輩が、塞いでいる私に「亡くなった人に選ばれたんだから、その人を看取るという貴重な経験をさせてもらえたんだよ」という言葉をいただき、私の「死」と向かい合う視点が変わったことを憶えています。

そういった「死」と向き合い、「看取る」ということの大切さを看護の現場で実感し、それが、「亡くなった人の身体を整えることをいつかケアとして検討したい」と思う切っ掛けにもなりました。

Q.若い看護師さんを中心に早期離職が増えています。小林光恵さんはその理由につきましてどのようにお考えでしょうか?

今の時代、看護職は、するべきこと考えるべきことが増える一方だという印象です。そんな中で看護師さんはギリギリまで一生懸命に勤めますし、疲弊する要素は沢山あると思います。私は、長く同じ病院等に勤めることが必ずしも良いとは思いません。離職を通して次の環境へ進み、別の視点で自身のことを見つめ直し、再認識や発見ができるのであれば早期離職が悪いとは言えないと思います。

私が勤務していた頃は、看護師は色々な科目、病棟を経験させるためにナースの希望に反して頻繁に異動があった印象です。現在は、配属先(ケア領域)の希望が尊重される傾向にあるように思います。それでも勤務先の方針に合わない場合もあるでしょう。私の場合は、看護の現場から離れ、「視点を変える」こと、つまり編集の道に進んだことで、看護、医療、自身のことについて改めて見つめ直し、結果初めて見えてきたことが多くありました。

例えば転職を通じて、ご自身にあった場所を探し、色々な視点でご自身と看護を見つめ直すことができるのであればそれも良いと考えています。

看護の世界は、研究テーマの宝庫だと社会学の方に言われたことがあります。日々の多忙な看護という業務の中で、気になったことや違和感を感じる部分があれば、それの原因を考え、研究し改善するという取り組みも面白いかもしれません。

Q.男性看護師のキャリアステップ、将来のニーズについて小林光恵さんはどのようにお考えですか?

男性看護師は、男性であることを活かした仕事によって職場に広がりをもたらしてくれる存在だと思います。

また、職場に男性がいるだけで、女性は身だしなみやオシャレに気をつかったりしますよね笑。そういうことって、実は重要だと思います。もちろん、力仕事でも活躍される場面もあります。男性は、患者さんが男性の時にも同性ならではのコミュニケーション力を発揮したり、中には女性の患者さんも男性の看護師に看護されると、元気になったりする人もいますよね。

また、看護業界としても将来、男女ともに看護師が活躍する場所は広がっていくと思います。
キャリアパスとしても、選択肢の一つとして専門看護師、認定看護師などへの道もありますし、主任、師長、部長などのポストもあります。

少し話は変わりますが、男性看護師という言葉自体は皆様はナースマンという言葉でご存じかもしれません。私の著書の新米の男性看護師の小説がもとになったドラマ「ナースマン」ですが、ドラマのタイトルにもなったナースマンという言葉は私が考えました。なぜナースマンにしたかといいますと、タイトルを色々考えた末、看護師は「ナース」、デビット・ボウイの「スターマン」という歌が好きだったので、その「マン」を合わせ、「ナースマン」となりました。最初はそんな言葉は良くないでしょ?という声も一部からはあったのですが笑、いつの間にか浸透していって笑。

編集の方から男性看護師をフォーカスすれば絶対面白い作品ができる!という提案があり著書も生まれ、ドラマも始まったのですよね。

Q.小林光恵さんがお考えになるターミナルケアにおける医療の課題は何になりますか?

ターミナルケアを提供する場所やシステムなど課題は少なくないと思っています。合理的に効率良くといった方向性とは逆の視点も重要になってくる段階だと思うので。

国の動きとしては、在宅療養を広める方向に進んでいる印象です。在宅等諸は、ご家族が時間や経済的にも対応できる条件が備わらなければ難しい面がありますが、病院ではない場所でのターミナルケアは今後も広がっていくとは思います。

しかし、本人やご家族の心が揺れるなど様々な事情があり、病院での対応は必要とされています。在宅で療養をしていても、最終的には入院して延命を望むご家族もいます。当人の希望としてはどうなのか、医療はどう関わるべきか、色々と考慮して判断&処置するのは大変に難しい問題です。

小林光恵さんについて

Q.小林光恵さんが普及活動をされているエンゼルメイクとエンゼルメイク研究会の活動について教えていただけますか?

私が産まれ育った茨城県行方市(旧:玉造町)は、のどかな田舎町なのですが、昔、誰かが亡くなった時には家族が思いをこめて大切に亡くなった人の身体を拭いたり着替えをしたりメイクをしたりしたものです。

その一方で、私の看護師の体験では、亡くなった人の身だしなみの整えは家族不在の処置的な対応でした。業務として不思議な位置づけで、その象徴的なこととしてお顔を整える化粧品自体が持ちよりだったんですよ。しかもお菓子の缶に入っていたりします笑。例えば口紅は誰かがハワイのお土産にもらったかのようなカラフルな色だったりするのです。不十分な品ぞろえでした。もうこれを使ったら「おてもやん」になってしまっても仕方ない、みたいなものばかりでした笑

どなたかが亡くなった時は通常、看護師が2人ぐらいで対応します。身体を拭いたり、更衣をしたりするのですが、その間にご家族には室外でお待ちいただいていました。ご家族は病室から出ないといけないのです。チューブ類を抜いたり傷の手当をしたりする場面をご覧いただくのはつらいだろうという看護側の配慮です。しかし、ご遺体からご家族を引き離してしまって良いのだろうか、といった疑問がありました。

その後、時を経てエンゼルメイク研究会を発足しました。エンゼルメイクとは亡くなった人の身だしなみの整え全般のことで、エンゼルケアはエンゼルメイクを含むすべての臨終後のケアのことです。

こんなエピソードがありました。

ある高齢の男性が亡くなった時のことです。彼の息子さんが病室の部屋の端の方で佇んでいらっしゃいました。そこでエンゼルメイクの一環として、足のツメを切ってくださいとお願いしたところしぶしぶ慣れない手つきで切り出したのですね。でも、いつの間にか、ツメを切りながら、お父様の足を擦り、足に向かって話しかけはじめたのです。担当したナースは、その男性から、「やってよかったです」と言葉をいただいたそうです。そこで、ツメを切るという手段を提案できたことの結果として、貴重な看取りの一場面となったかもしれません。

エンゼルメイクは看取りの手段になり得ることについて、今後は一般にも積極的に広めて行きたいと考えています。

Q.今、小林光恵さんが新しく始めたい事はありますか?

沢山あります!

長らく読んできた「短歌」を詠みたいと思っています。また、ホームページに掲載している「そんな日もある」という4コマ漫画で今後は色々なテーマを扱っていきたいです。例えば今、茨城県のつくばに住んでいることもあり、インターナショナルな環境ですので、「そんな日もある」という言葉をインターナショナルな言葉に置き換えて紹介したいと進めています。

また、私はファッションに興味があるので、講演などをする時にユキ タカセというデザイナーズブランドの服を好んで着ています。看護の人達は基本制服仕事なので、着こなしが苦手な人も中にはいらっしゃると思います。プライベートの着こなしについて提案し看護師がプライベートでより輝ける機会があれば素敵だなと思っています。

最後に

Q.小林光恵さん原案の「おたんこナース」を読んで育った看護師さんは多くいらっしゃいます。この作品の誕生秘話や 裏話があれば教えていただけますか?

「おたんこナース」の内容は、皆様ご存じの通りですが、最初のころの話は私の看護師としての実体験がベースになっています。漫画家の方や担当編集者の方と密にやりとりしながら進められました。看護職ではない方と一緒に、看護や看護師のことについて考えることができたことは非常に勉強になりました。

看護師としての私の経験は、おたんこナースにも表現されていますが、とにかく必死で色々目まぐるしく流れ、常に新しく、そして重く、衝撃的な体験の連続でした。

Q.これから看護師になろうとしている人達や現場で頑張る看護師さん達へ、小林光恵さんからメッセージをお願いします。

「看取る」お手伝いをすることもそうですが、看護師という職業でしか体験できないことがたくさんあると思います。仕事は大変で、時に辛く、時には楽しく、そしてやりがいを感じていらっしゃることでしょう。看護する立場として人と向き合い、人の病気と生と死、そのご家族と深く関われる仕事には奥深い魅力があると思います。

仕事が辛いなどの理由で、辞めたい、職場を変えてみたいと思っていらっしゃる方もいると思いますが、そういった時は「視点」を変えてみて、ご自身と環境を見つめ直してみてください。結果、目に写る景色が変わり、それがプラスにはたらくはずです。無理はせずにがんばってください!

小林光恵さん プロフィール --------------------------------------------

茨城県行方市(旧:玉造町)生まれ。東京警察病院看護専門学校卒業。看護師として東京警察病院、茨城県赤十字血液センターに勤務。病院勤務、献血ナース、フリーで約5年間ナースとして勤める。その後編集者など約5年間携わり、その後独立。1990年から著述業を中心として活動をはじめ2001年よりエンゼルメイク研究会代表となる。
現在は、執筆活動やエンゼルメイクの講演会を全国で実施中。茨城県行方市大使としてPR活動も行っている。

小林光恵さんは著書を多数出版されており、マンガ『おたんこナース』、日本テレビ系列『ナースマン』原案者。代表的な著書に『死化粧-最後の看取り』(宝島文庫)、『ナースのおしゃべりカルテ』(幻冬舎文庫)、『12人の不安な患者たち』(集英社文庫)、『改訂版ケアとしての死化粧―エンゼルメイクから見えてくる最後のケア』(日本看護協会出版会)、『こちら、ナース休憩室』(PHP研究所)等。

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小林光恵さんの4コマ初回作!とある家庭とご近所さんが舞台。ネコやかえるなどバラエティー豊かなキャラクターも登場する、読むとほっこりするお話です。

小林光恵さんの新ナース4コマ漫画 >>
新たに看護師さん向けに「ナースの世界編」4コマ漫画を描き下していただきました。看護師さんの日常で体験するちょっとした「あるある」を小林さんの看護師としてのご経験をもとに独自の視点と感性でやさしく描かれています。

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