疲労と睡眠との深い関係



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寝入りばなの睡眠の質を上げることが疲労回復の鍵


ノンレム睡眠の質を上げよう 
疲労と睡眠は深い関係があります。というのは疲労は最終的に脳で感じるものであり、産・官・学合同抗疲労プロジェクトのチームリーダー梶本修身教授によれば、「脳の自律神経の疲労こそが疲れの原因」と言っています。

その自律神経の疲労を回復させるために睡眠は最も大切な行為なのです。したがって、睡眠時間を十分に確保するだけではなく、その睡眠の質を上げることが疲労を回復させるうえでとても大切になってきます。

睡眠は何のためにある?
睡眠は脳と体に休息を与え、自律神経を整えるだけでなく、成長ホルモンなどを分泌させ、免疫力を上げ、脳内の老廃物を除去するという重要なはたらきがあります。

さらに、人間の体からは疲労すると、疲労を回復させようというタンパクFF:Fatigue Recover Factorも分泌されるのですが、これにより細胞は修復され、疲労から回復することができるのです。

睡眠不足だとこの疲労回復因子FFの効果が低下してしまうのです。 

また、睡眠時間を制限したマウスでは、アルツハイマーの原因ともなるアミロイドβというタンパクの蓄積がみられるという研究報告があります。

このように、睡眠は覚醒時にはできないような代謝を通して、細胞を修復し、生命を維持するための重要な時間といえるでしょう。


理想的な睡眠時間は何時間?
睡眠研究の権威であるDaniel Kripke教授によれば、「一晩8時間の睡眠時間が適切という根拠はなく、一晩に6時間半から7時間半の睡眠を取る人が、長生きで幸福度も高く、最大の生産性を発揮している。」ということです。

一方、秋田大学医学部の三島和夫助教授によれば、「20代の必要な睡眠時間は平均8時間30分前後、そして年齢とともに徐々に短くなり、70代では7時間弱まで短くなると予想される。」とのことです。つまり、年齢によって必要な睡眠時間は変わり、若い人ほど長い睡眠時間が必要であるということです。

また、彼は必要な睡眠時間は個人差も大きく、それぞれ脳波を測定しなければ、本当に必要な時間は分からないとも話しています。

したがって、適正な睡眠時間は、専門医による脳波測定が必要です。

しかし、それが無理なら、適切な睡眠時間は自分の体調と相談しながら各自で見つけてもらうしかないわけですが、若い人ほど睡眠時間が必要であるということも考えると、一つの目安として一晩6時間以下の睡眠は少なすぎるということが言えると思います。




さらに、NHKの調査では、東京都に限定すると、平日の平均睡眠時間は5.59時間と6時間にも満たないことがわかりました。

このことからいかに日本人が睡眠時間を削って、働いているかという実態がわかります。
KAROSHI(過労死)という言葉が英語になっているそうですが、この日本人の睡眠時間の短さと過労死は無関係ではないでしょう。


睡眠のメカニズムと疲労
先ほども述べましたが疲労回復のためには睡眠は「どれくらい眠ったか」という時間だけではなく、「どれくらい深く眠れたか」という質を上げることも大切です。

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠という2つの段階があります。

レム(REM)とはRapid Eye Movement(急速眼球運動)の略であり、文字通り眼球が素早く動く動きをしている状態の浅い睡眠を意味します。

睡眠は寝てからこの浅いレム睡眠を経て1時間ほどで最も深い眠りを示すデルタ波のノンレム睡眠に移行しますが、この時に細胞を若返らせる成長ホルモンが分泌されます。

このレム睡眠とノンレム睡眠とは約90分ごとに似た波形を繰り返しながら、徐々に浅くなり覚醒していきます。

睡眠研究の世界的権威であるスタンフォード大学によれば、この寝入りばなからの90分間のノンレム睡眠で睡眠全体の質が決まると報告しており、この時間を「90分の黄金法則」と呼んでいます。

この寝入りばなの1時間30分、すなわち90分が何らかの要因で阻害されると、その90分以降のノンレム睡眠は脳波が測定できないほど乱れてしまうということです。

この90分は成長ホルモンが最も分泌される時間でもあり、細胞や体組織に働いて、細胞分裂を促進させ、再生を促進します。

脳の神経細胞も最も休息できる時間ということから、この90分は疲労を回復する上で大切な睡眠時間ということになります。

スタンフォード大学の研究によると、たとえば「6時間睡眠」の人と「8時間睡眠」の人がいた場合、この寝入りばなの90分の質いかんで、「6時間睡眠」の人の方がぐっすり眠れてすっきりしている場合もあるということです。

交感神経がストレスによって過大にはたらくようになると、自律神経が乱れ、疲労感だけでなく、頭痛、めまい、肩こり、腹痛、冷え性、イライラなど、一般に自律神経神経失調症といわれる症状が出てきますが、この自律神経を整えるためにもこの寝入りばなの90分の眠りがとても大切なのです。

睡眠の質を上げ、血行を促進させるには入浴の工夫が大切
それでは、疲労感を軽減させるために、睡眠の質を上げ、脳の自律神経を休息させるにはどうすればいいのでしょうか?

スタンフォード大学の研究によれば、
寝る前に意図的に皮膚体温を上げ、熱放散させ、その反動で深部体温を下げさせ、眠りに入ることで、寝入りばなの90分がずっと深くなる。ということです。

すなわち、
入眠前に意図的に皮膚体温を上げて、熱放散させ、その後反動として深部体温を下げる。ということにより、副交感神経が優位となり、体温や血圧も下がり、眠りが深くなる。ということです。 

これを実践するために番よい方法は入浴です。

入浴には血行を促進させ、体の老廃物を除去しやすくするという効果もあります。

40℃のお風呂に15分入ったあとで深部体温は0.5℃上昇し、その分反動として、深部体温は低下する。ということです

この研究によれば、
0.5℃上がった深部体温が元に戻るまでの所要時間は約90分。
そこで、
就寝する90分前に入浴を終えれば、横になった時点で深部体温が下がりはじめ、より深い眠りが期待できる。ということです。
これをグラフに表すと以下のようになります。

(入浴例)22:00に入浴開始、15分程度40℃の湯につかる
22:30に入浴終了、その90分後、すなわち24:00に就寝、これ以降は非入浴時に比べ深部体温が下がる

以上が理想的な入浴方法ですが、この深部体温の反動を利用し、さらに深部体温下げることをねらって、41℃以上の熱い風呂に入るのは逆効果です。

なぜなら人間の体は自律神経によるホメオスタシス(恒常性)がはたらき、深部体温の変化は外部の温度に比例して大きくなるものではなく、さらに熱い湯では交感神経が活発になり、緊張してしまうからです。

忙しくて就寝前90分の時間がとれない人はぬるめの入浴を
忙しくて入浴から就寝までどうしても90分も時間がとれないという人は、ぬるめのお湯につかることをおすすめします。

なぜなら、ぬるい湯では深部体温があまり上がらない分、下がるまで90分もかからないからです。
ただ、皮膚温度との差が縮まりにくい分、効果は少なくなってしまうといえるでしょう。

血行も促進させ、より効果を上げるなら炭酸泉
スタンフォード大学と秋田大学の共同研究によれば、炭酸泉やナトリウム泉といった温泉浴のほうが、普通浴よりも深部体温が上がり、その反動としてより熱放後の深部体温が普通浴よりも大きく下がることがわかりました。

さらに脳波の測定でも最初の90分のノンレム睡眠が深くなっていることがわかりました。
したがって市販されている炭酸ガスの入浴剤は質のよい睡眠を得るためにも、たいへん効果的であるといえます。

さらに、このような入浴剤は毛細血管を刺激し、血行を促進させる効果もありますので、疲労回復には是非取り入れたいものです。

この炭酸泉の効果を高めるには、やはり40℃程度のぬるめのお湯に15分~20分程度つかることが効果的とされています。

ただし、ナトリウム入りのものは入浴後、湯疲れやのぼせなどが起こることが多く、慢性疲労を抱えた方はやめたほうがいいででしょう。

シャワーより効果的な足湯
忙しく時間がない人はシャワーですませてしまう人もいるでしょうが、どうしても入浴の時間がとれない場合は足湯が効果的です。

というのは、足湯では体温の上昇はあまり期待できないにもかかわらず、深部体温の下降は期待できるのです。

その理由は、足には毛細血管発達しているため、放熱効果が大きく深部体温を下げやすいからです。

ちなみに、靴下をはいて寝ることは放熱効果が妨げられるのですすめられません。

頭部を冷やし、脳を休めよう
脳の温度は深部体温の動きと似ており、入眠時には低くなります。
だれでも、頭や枕が熱くなって寝にくい経験はしていると思いますが、すみやかに眠りに入り、脳神経を休めるにはやはり頭部の温度を下げた方がいいのです。

そのようなことから、枕の選択は重要で、通気性がよく頭部の温度を奪ってくれる「そば殻枕」は有効であり、日本人の知恵といえるでしょう。

また、枕の高さはあまり高いと気道を塞ぎ、いびきや低酸素状態になってしまうので気をつけましょう。


寝る前にスマホやPCを見ない
近年、疲労を訴える人が増えているのは、寝る前にスマホやPCを見る人が増え、そのブルーライトによって、脳神経の休息が妨げられるからだという説があります。

ブルーライトは紫外線に周波数が近く、エネルギーが強いため、神経を興奮させ、活性酸素を発生させてしまうのです。

また、就寝前に部屋などを明るくしておくと、睡眠を促すホルモンであるメラトニンがセロトニンからつくられなくなってしまいます。

また、このメラトニンはさきほども述べた深い眠りに重要な深部体温を下げるというはたらきもするのです。

ですから、少なくとも就寝1時間前は、明るいものを見ずに部屋を暗めにしておくことも大切です。

照明も、白色より波長の長い電球色に変えるなどの工夫も必要です。


夕方以降はカフェイン入り飲料は飲まない
コーヒーは皆さんもご存じのようにカフェインが入っており、睡眠を妨げます。

コーヒーのカフェインは摂取後30分で血液中濃度が最大になります。
その後4~5時間でカフェインの血中濃度は半分になり、8~12時間後には体内のカフェインはほぼ排出されるといわれます。

ただし、この感じ方には個人差が大きく、血中濃度が半分になった時点で、カフェインの覚醒効果を感じなくなる人もいれば、まだ敏感に覚醒効果を感じている人もいます。

ですから、このカフェインの効果が抜けるまでの時間は、各自の経験から導きだしてもらうのがよいと思いますが、少なくとも夕方以降はコーヒーなどのカフェイン入りの飲料の摂取はやめたほうがいいでしょう。

また、このHPの食事のコーナーで詳しく解説していますが、コーヒーは毎日飲み過ぎると副腎を疲労させ、一時的には元気になったように見えても、長い間には疲れやすい体になるといわれています。

コーヒーを飲んで、「気持ちを引き締めたい」、「頭をさえさせたい」という気持ちはよくわかりますが、あなたが慢性疲労で悩んでいるなら、少し控えめにした方がいいでしょう。

寝酒は睡眠にとって悪影響!
よく、寝付けないから、よく眠れるようにと、寝る前に酒を飲むことが習慣となっている人がいます。寝酒は睡眠にとっては悪影響しかないと言ってもよいでしょう。

実際にフランスの製薬会社が2002年に世界10カ国(日本、中国、オーストラリア、ベルギー、ドイツ、ポルトガル、スロバキア、スペイン、南ア共和国、ブラジル)を対象に睡眠調査を実施したところ、日本では成人の約5名に1名が不眠に悩み、その対処法として「アルコールを飲む」と答えた割合は日本が30.3%でトップとなっていました。

確かにアルコールを一定量飲めば眠くなることもありますが、たとえアルコールの力で寝られたとしても、これは酩酊状態の睡眠であり質のよい睡眠ではありません。

まず、アルコールは少しの量では覚醒作用があるため、アルコールで眠ろうとすると、かなりの量を飲まなくてはならなくなります。

さらに、アルコールで生じたアセトアルデヒトの分解のため、大量の活性酸素が発生し、細胞にダメージを与えます。

そしてノンレム睡眠の時間が短くなることで睡眠の質は下がり、これに利尿作用も加わり、中途覚醒も起こりやすくなります。

長期にわたり寝酒をすると、アルコールには耐性ができてしまうため、更にアルコールの量が増えることになり、結局はアルコール依存症になってしまい、不眠も悪化することが多いのです。

また、アルコールを摂取して寝ると舌根が落ちて気道閉塞が起きやすく、いびきをかきやすくなり、無呼吸や低呼吸を起こしやすくなり、睡眠の質が下がるだけでなく、ときには命に関わる可能性もあります。

このように、寝酒は睡眠にとって悪影響しかなく、この習慣はすぐにでもやめたいものです。

朝起きたら、太陽を浴びる
朝起きたら、カーテンを開け、太陽の光を浴びるということは大切です。
太陽の光を浴びると脳内からセロトニンが分泌されます。
セロトニンは神経伝達物質であり、これにより脳全体が活性化され、元気に活動できるようになります。
すなわち太陽光をあびることにより、脳が目覚めやすくなるということです。
さらに、睡眠を誘導するといわれるメラトニンはセロトニンからつくられるため、夜、深い睡眠に入るには、日中は太陽光をよく浴びておくことも必要です。


睡眠時無呼吸症候群に注意!


睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に一時的に呼吸が止まる病気です。

医学的には、10秒以上の気流停止を無呼吸とし、1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸と診断され、特に無呼吸が一晩(7時間)に30回以上の場合は睡眠時無呼吸が重症と診断されます。

この睡眠無呼吸症候群になると、本人は眠っているつもりでも、無呼吸や低呼吸になり、脳が酸素不足になるたびに、脳が覚醒して無理に呼吸を再開させるため、疲労が回復するどころか悪化する場合もあります。


下記のチェック表は、スタンフォード大学で作成された眠気の自己評価尺度です。合計点数が5点以上の場合は、睡眠の質の低下や睡眠不足が疑われ、11点を超える人は「睡眠時無呼吸症候群」の疑いがありますので、医療機関を受診してください。

jess(眠気自己評価表)ESS日本版
以下のことが実際になくても場面を
想像して、すべての項目に答えること


→疲労を引き起こす食事へ
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